めずらしいことに、夢から醒めてうっすらとひらいた瞳にカーテンから 漏れるキラキラ眩しい朝日がとびこんでくることはなかった。夜明け前 に眼が醒めるなんて、なにかいやな夢でもみてたかな。漠然と。思い出 そうにも覚えてない。 とにかく。あと何時間寝れるんだろう。何の気なしに寝返りを打つと、 ギシ、ベッドがかるく鳴いた。と同時に、んん、というくぐもった声。 声だ。ベッドが鳴くのは、音。 (…、またか。) すこしだけ暗闇に慣れた眼にとびこんだのは日の明るさなんかじゃなく て、憎たらしいくらいに気持ちよさそうな変態の寝顔だった。ここのと ころ毎朝いちばんにみている阿呆面だったから今さらおどろくわけもな い。やめろっていってもききゃあしねぇ。 「おい、仁、」 「ん…、みつ、あさ?」 すこし掠れた声がしんとした部屋におちる。こいつときたらうつらうつ らしながらでも頬をペチペチと叩いていたオレの手を捕まえて、ぎゅっ と自分のほうにひき寄せることは怠らない。変態だ。 お前いいかげんオレが寝てる間にベッドに忍びこむのやめろよな。ため 息と一緒にもらしたはず自分の声が孕んでいてはいけない穏やかさを孕 んでいてびっくりしてしまった。そんなびっくりを知るはずもなく穏や かさいっぱいの文句を浴びせた変態からは、なんだ、まだ夜中じゃない か、とすっとぼけた声が響いた。なんだコレ、話噛みあってねー。 「なんでお前自分のベッドで寝ねぇんだよっ」 「こうやってみつ抱えて寝たほうが気持ちよく眠れるから」 「オレが寝てる間に入ってくるのはなんで」 「みつが寝たあと忍びこんでみつの寝顔を堪能しつつみつを起こさない ようにベッドに入りこむほうがスリルがあって興奮するから」 「あーこの変態!」 寝てる間に変なことしてねーだろな、お前っ!ぐっと睨んで詰めよると 仁は声をだして笑った。 ああ判ってる。言ってみただけだ。仁が自分の意志のみで、無防備な状 態のオレに勝手に触れたりしないことはちゃんと知ってる。ここだけは 紳士なんだ。ほんとにここだけは。 「寝てる光也をみるのは可愛いし好きだけど、なにもできないからつら いんだよなぁ」 「んっ…ちょ…っ、仁!」 「いまならいいだろ?」 おでこ、頬、唇、次々にキスを降らす変態の顔を手で押しかえしながら 考えた、ことは。 「なぁ、」 「ん?」 「変態のことを好きなやつって、変人?」 仁がまた、声をだして笑った。                     変人と変態















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もはや妄想だけで暴走です…