重い瞼をゆっくり開くと、シーツに波打つ皺がぼんやりと目に映った。
そこから少しだけ目線を上に向ければ目に入る位置に時計が置いてあって
、いつも目を覚ました後そうするように、決まりきった動作のように、微
睡みから抜け切らない頭のまま、無意識にその辺りに目を向ける。なんと
なく輪郭が確認できただけで数字を指す針は見えなかったが、それでも針
が見えないくらいの暗さなら、まだ夜が明けていないということくらい時
間を確認しなくても判る。今はそれで充分だった。
秒針が刻む音がしん、と静まり返った部屋に響く。ひたすら機械的だ。
ぼうっと耳を傾けていると、んん、と、機械的な秒針の音とは違う声が背
中越しに漏れた。途端に顔が見たくなったので寝返りを打つ。
寝顔は可愛いのに。よくいう台詞だけど、そうおもう。むきゃー、だの、
訳の判らない奇声とか。変態じみた言動とか。そういったものは微塵も感
じさせない。大分暗闇に馴れてきた目がはっきりとその寝顔を捉える。衝
動的に手を伸ばして指先でその唇を軽くなぞると、まるで指先から吹き込
まれたかのように、先輩、と、言葉をこぼした。
「ごめん、起こした?」
「だいじょぶです」
へら、と笑うその顔が可愛くて、でも汗ばみ上気した身体はつい先程まで
の情事を物語るように艶かしくて、そのギャップに軽い眩暈を覚える。
ふいにのだめが両腕を伸ばしてオレの濡れた前髪に触れた。
「はうー…先輩、セクシーです」
バカ、それはオレの台詞だよ。
指先を前髪に絡めて遊ばせるのだめの腰に両腕を回し抱き寄せて鎖骨あた
りに散ばる赤い痕に再び唇を落とす。甘い声が漏れた。
…ああ、そういや今日は休日だっけ。
甘やかな、