さっきからパラパラと捲っている雑誌のページに並ぶ文章は、実をいうと
目に映っているだけで頭には入っていない。
そろそろ横からの視線に気づかないふりもできなくなってきて、やれやれ
、とでも言いたげな仕草を含ませ形だけになってしまった雑誌を膝の上で
閉じたオレは、かれこれもう5、6分近くも雑誌に集中できなくなるくら
いに人の事をじっ、と見つめる大きな瞳と視線を合わせた。
「…なに?」
「……見てるだけ、デス」
きっとこうくるんだろうな、そう考えていた通りの答えを返すのだめは、
多分本音を言ってはいない。
お互いにソファーの端と端に座っているから、真ん中には人1人分くらい
のスペースがあって、それを埋めるようにのだめの腕をとりそのまま少し
強く引き寄せる。
むきゃ、と色気のない奇声を上げる体を構わず両腕の中にぎゅっと収める
と、のだめは少しだけ苦しそうな吐息を漏らした。
「……、先輩」
「ん」
「なんでわかったんデスか?」
「なにが」
「…なんで、のだめが先輩に抱きしめてほしいとおもってるって、わかっ
たんデスか?」
ほら、それが本音だろ。
口を尖らせて見上げてくるのだめの髪を指で軽く梳いてやると気持ちよさ
そうに目を瞑るから、吸い寄せられるままに閉じられた瞼にそっと唇を落
とした。腕の中の体がびくんと揺れる。
(なんで?って、)
「…そりゃあ、ね、」
(愛してますからね。)
理由